この制度は、青色申告書を提出する法人(個人)が、平成25年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度(個人は平成26年から平成30年までの各年)において、国内雇用者(注1)に対して給与等を支給する場合、適用年度(注2)の給与支給額や平均給与支給額等に基づく一定の要件を満たす場合には、税額控除が認められるというものです。

(注1)国内雇用者とは、法人(個人)の使用人(法人役員の特殊関係者及び使用人兼務役員を除きます)のうち、国内の事業所に勤務する雇用者をいいます。

(注2)適用年度とは、実際に税制の適用を検討している事業年度をいいます。

改正の基本的な考え方

企業収益の拡大が雇用の増加や賃金上昇につながり、それが消費や投資の増加に結び付くという経済の「好循環」を強化する必要があり、そのため当税制について、企業に更なる賃上げインセンティブを与える機能を強化する観点から、高い賃上げを行う企業への支援を強化することになりました。

また、中小企業にも賃上げの動きの広がりが見られるものの、依然大企業とは差がある状況であり、こうした状況を踏まえ、中小企業による更なる賃上げを後押しし、経済の「好循環」を強化する観点から、当税制について、高い賃上げを行う中小企業に対して、大企業を上回る支援の強化を行うことになりました。

特に中小企業については、賃上げに連動して増加する社会保険料負担等を考慮して、賃上率2%以上の場合には、前事業年度からの増加額について12%を上乗せし、合計22%の税額控除とされています。

税制の適用要件と改正後の比較

平成26年度改正で適用要件が緩和され、平成29年度改正で税額控除額が従来の控除額に加えてさらに上乗せされています。右記の改正前との比較表で内容(適用要件及び税額控除額)を確認しましょう。

  改正前 平成29年度
改正後
適用要件 適用年度の従業員給与総額が、平成24年度(注3)の従業員給与総額より、大企業について平成29年度は5%以上(平成28年度は4%以上)、中小企業者等は3%以上増加していること 改正なし
適用年度の従業員給与総額が前年度の従業員給与総額以上となっていること 改正なし
適用年度の継続雇用者一人あたりの平均給与が前年度の継続雇用者一人あたりの平均給与額を上回っていること 適用年度の継続雇用者一人あたりの平均給与額が前年度より2%以上増加していること(大企業のみに適用。中小企業等は改正なし
税額控除等

(税額控除額)

(適用年度の従業員給与総額-平成24年度(注3)の従業員給与総額)×10%

(税額控除額)

(適用年度の従業員給与総額-平成24年度(注3)の従業員給与総額)×10%+(適用年度の従業員給与総額-前年度の従業員給与総額(※1)×2%(※2)

(※1)下線部分は、「適用年度の従業員給与総額-平成24年度(注3)の従業員給与総額」を限度とする。

(※2)中小企業者等については、上記適用要件③(大企業のみに適用される要件)を満たす場合には12%の上乗せとする(満たさない場合は上乗せ部分ゼロ)

(税額控除限度額)

法人:法人税額の10%(中小企業者等は20%)が上限

個人:事業所得に係る所得税額の10%(中小企業者は20%)が上限

(税額控除限度額)

改正なし

(注3)個人の場合は平成25年分となります。

平成29年度改正の適用時期

法人:平成29年4月1日以後に開始する事業年度において適用されます。

個人:平成30年分において適用されます。

この記事は平成29年9月26日に発行されたものです。
※上記の制度については平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度(個人は平成31年分から平成33年分までの各年)から適用される改正があります。
詳しくは以下のページをご覧ください。

あなたのミカタになる情報を発信!

関連記事

平成29年度税制改正〜上場株式等の個人住民税の課税方法の見直...

税務

平成29年度税制改正〜収入の壁と所得税の配偶者控除・配偶者特...

税務

特例措置の適用可否〜措置法の中小企業者の範囲を見直し(その3...

税務

令和2年度税制改正~地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の...

税務

平成30年度税制改正〜給与所得控除額等・基礎控除の見直しと所...

税務

軽減税率の対象となる取引〜消費税率10%への引上げ(その1)...

税務