事業所や店舗を賃借する際に、不動産仲介業者に保証金や敷金・礼金・家賃・仲介手数料等の支出が伴います。これらは金額が多額となることが多く、特に保証金・敷金は賃貸借契約書の内容により取扱いが多岐にわたるため留意が必要です。

保証金・敷金の一般的な取扱い

通常、保証金・敷金は賃貸借契約後に返金されるものであることから、「差入保証金」等の勘定科目で資産計上します。

しかし、賃貸借契約書等に一定期間経過するごとにその一部分を返還しない旨の特約や、賃貸借契約締結時に一部を返還しない旨が定められているものもあり賃貸借契約書の内容は多岐にわたります。

いずれにしても、返還されないことが確定した時点でその返還されない部分の保証金を経理する必要があります。裏返していえば、保証金・敷金である「差入保証金」等の資産計上金額は将来返還されるべき保証金となります。

それでは、税務上と会計上の返還されない保証金と礼金等の取扱いをみていきましょう。

返還されない保証金等の税務上の取扱い

返還されない部分の保証金は税務上の繰延資産となります。繰延資産とは「支出の効果がその支出日以後1年以上に及ぶもの」とされ(法第2条第24号)、政令で限定列挙されています。ただし、資産の取得に要した金額とされるべき費用や前払費用は除かれます。(法令第14号)

なお、繰延資産に該当するもののうち、20万円未満のものについては、支出の日の属する事業年度で損金経理(費用処理)した場合は損金の額に算入されます。(法令第134条)

返還されない部分の保証金が20万円以上の場合に税務に沿って資産計上(会計処理)するときは「長期前払費用」等の科目で計上し、支出日以後5年(賃貸借契約書で賃貸借期間が5年未満の場合はその期間)で均等償却していきます。
繰延資産の取得価額である20万円以上の金額判定は、返還されない部分の保証金と礼金(通常は返金されないもの)との合計額(以下「返還されない部分の保証金等」という)で判定することが必要です。

保証金・敷金等の取得価額は?
ここでは論点となっていませんが、税務上の繰延資産の借家権利金のうち、新築建物等の建築費の大部分が権利金に該当する場合や明け渡し時に権利金が転売可能な場合は、建物の耐用年数の7/10が償却期間となります。

入居の際に不動産仲介業者に支払う仲介手数料については、支出の日の属する事業年度で損金の額に算入することができます。(法基通6-1-5)

返還されない保証金等の会計上の取扱い

会計上の資産の概念は「資産とは、一定時点における企業資本の具体的運用形態であり、将来の収益獲得に役立つ経済的価値を有するものをいう」とあります。このことから、返還されない部分の保証金等は経済的価値がないこと、また、会計上の繰延資産にも該当しないため資産に該当せず、返還されないことが確定した時点でその返還されない部分の保証金等を全額費用処理します。

この費用処理した中に、税務上の繰延資産のうち20万円以上のものがある場合には、税務上の資産計上部分を加算(資産計上部分は損金とならない)し、翌期以降は、税務上の償却部分を減算(損金となる)して申告調整します。

したがって、会計上は返還されない部分の保証金等のうち「長期前払費用」等の勘定科目で資産計上される金額はありません。

勘定科目の表示

保証金・敷金等は資産科目の「投資その他の資産」区分において「差入保証金」等の勘定科目で表示します。

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