令和8年度税制改正大綱では、基礎控除の本則に直近2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率を乗ずることが明記され、また、給与所得控除にも同様の措置が講じられることとされました。

なお、当該改正案に関しては法令成立に伴い、制度内容変更の可能性があります。

改正案の基本的考え方

所得税については、基礎控除の額が定額であることにより、物価が上昇すると控除の実質的な価値が減少し、結果として、実質的な税負担が増加するという課題がある。

こうした課題に対応していくため、今後、次のような基本的考え方に基づいて基礎控除等を適時に見直すこととする。

基礎控除の本則部分については、見直し前の控除額に、税制改正時における直近2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率を乗ずることで調整する。

給与所得控除の最低保証額についても、基礎控除の本則と同様の措置を講ずる。

基礎控除と給与所得控除の改正案(本則)

 国税

令和8年度の税制改正においては、令和8年・9年分所得に適用される控除額として、令和5年10月から令和7年10月までの2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率6.0%を踏まえ、基礎控除の本則については現行58万円を62万円に、給与所得控除の最低保証額については現行65万円を69万円にそれぞれ引き上げる。

令和8年度の税制改正においては、令和8年・9年分所得に適用される控除額として、令和5年10月から令和7年10月までの2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率6.0%を踏まえ、基礎控除の本則については現行58万円を62万円に、給与所得控除の最低保証額については現行65万円を69万円にそれぞれ引き上げる。

 地方税

住民税の給与所得控除について、65万円の最低保証額を69万円に引き上げる。

基礎控除と給与所得控除の改正案(措置)

 国税

基礎控除の特例のうち現行37万円を5万円引き上げるとともに、対象者も給与収入200万円相当までから475万円相当までに拡大する。

給与所得控除の最低保証額も同様に5万円引き上げる。

さらに、給与収入475万円相当から665万円相当までを対象としている現行10万円の基礎控除の特例を32万円引き上げる。

この引き上げは物価高で厳しい状況にある中低所得者に配慮したものであること等を踏まえ、給付付き税額控除も考慮とすることから、令和7年分の時限措置とされた措置を含め、令和8年・9年分の時限措置として講ずる。

 地方税

令和9年度及び令和10年度(国税でいう令和8・9年分のこと)の個人住民税に係る給与所得控除の最低保証額について、地方税本則に加え、5万円引き上げる。

まとめ

改正案では現行制度に控除額が上乗せされるとともに、所得階層による控除額の壁が簡素化されており、中間所得層(給与所得者の80%)まで恩恵が受けられるドラスティックな改正案となりました。
また、合計所得金額489万円を超え2,350万円以下の納税者も一律に基礎控除が4万円加算されているため中間所得者層以上も恩恵を受けるものとなっています。

178万円の壁に一定到達した令和8年度税制改正

※1 現行制度の合計所得132万円以下の措置法にある37万円は措置法の恒久措置です。

※2 改正案の本則62万円は58万円に4万円(令和5年10月から令和7年10月までの2年間の消費者物価指数6.0%を踏まえたもの)を加算したものです。

※3 改正案の合計所得132万円以下の措置法42万円のうち、37万円は措置法の恒久措置であり5万円は措置法の時限措置です。
なお、合計所得132万円超から489万円以下の42万円及び合計所得489万超655万円以下の5万円は措置法の時限措置です。

※4 改正案の令和10年分以後の基礎控除に関しては本則と合計所得132万円以下の措置法の恒久措置の合計額です。(現行制度本則と現行措置法の恒久措置の合計額)
なお、改正案では本則の基礎控除について2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率を加えるとしているため、令和10年分以降は令和7年10月から令和9年10月までの2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率(物価が下降した場合には下降率)を考慮した金額が反映されることになります。

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