地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)については、個人のふるさと納税と比較して認知度が低いようです。この制度が令和2年度税制改正で拡充・延長されましたので確認していきます。

地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)とは

国が認定した地方公共団体の地方創生プロジェクトに対して企業が寄附を行った場合に、税額控除により税負担が軽減される制度です。
地方創生の更なる充実・強化に向けて、地方への資金の流れを飛躍的に高める趣旨から拡充・延長されました。

税制の手続きと拡充された内容

寄附の損金算入による税額の軽減効果(実効税率30%とすると3割)と最大で寄付額の6割(改正前3割)が税額控除され、あわせて最大で寄付額の9割が軽減される仕組みとなります。

企業版ふるさと納税のメリット拡充内容

通常の寄附(地方公共団体へ寄附)

法人が地方公共団体へ寄附をした場合、この制度にかかわらず全額が損金となります。法人の実効税率を30%と仮定した場合に、損金算入により所得が減少し、寄附支出額の30%の税負担が減少します。
ここまでの税負担関係は、他の損金算入される経費を支出した場合と同様です。

寄附金の場合は申告の際に、別表十四(二)「寄附金の損金算入に関する明細書」の「指定寄付金等に関する明細」欄に記載します。

地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の場合

地方公共団体への寄附金の支出が地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)に該当する場合には、「特定寄附金」となります。
前述した記載に加えて別表六(二十一)「認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄付をした場合の法人税額の特別控除に関する明細書」を記載します。

この明細に関連して道府県・市区町村にも特定寄附金に関する別表がありますのであわせてご確認ください。
また、地方公共団体より発行された寄附金の領収書の保存が必要です。

税額控除額と税額控除の上限

国税・地方税の税額控除詳細は以下のとおりです。

税目 税額控除額 税額控除の上限
法人事業税 特定寄附金 × 20% 法人事業税額 × 20%
法人住民税 特定寄附金 × 40%

<内訳>
道府県民税法人税割額:5.7%
市町村民税法人税割額:34.3%
それぞれの法人税割額 × 20%
法人税 法人住民税で4割に達しない場合にその残額を税額控除
但し、特定寄附金 × 10%が上限
法人税額 × 5%

寄附にあったての留意事項

対象となる寄附金額と寄附先

  1. 一回あたり10万円以上の寄附が対象
  2. 寄附による経済的利益を受けることは禁止
  3. 本社が所在する地方公共団体への寄付は対象外
    この場合の本社とは、地方税法における「主たる事務所又は事業所」を指します
  4. 次の都道府県・市区町村は制度の対象外
    • 地方交付税の不交付団体である都道府県
    • 全域が地方拠点強化税制における地方活力向上地域以外の地域に存在する市区町村

※こちらから寄附を募集している事業が検索できます・・・企業版ふるさと納税ポータルサイト

税額控除を活用するために・・

  • 所得(利益)が赤字の場合は所得に対する税額が発生しないため、税額控除の適用はありません。
  • 所得より一旦計算したそれぞれの税額に対して上限が設定され税額控除が計算されるため、支出額に対して必ず90%の軽減効果があるわけではありません。
    したがって、税制上のメリットを最大限享受するには寄付金額と比較して十分な所得による税額が計算される必要があります。

適用時期と適用期限

令和2年4月1日以後に開始する事業年度より適用されます。
適用期限は5年間延長され、令和7年3月31日(令和6年度末)までとなります。

まとめ

個人のふるさと納税と比較して、返礼品もなく最大90%の軽減を受けたとしても自己負担が10%ある企業版ふるさと納税は税制面のメリットが少ないように感じます。
しかし、この制度は正式名称が「地方創生応援税制」となっているとおり、寄附行為により自社のビジョンや経営理念と一致する地方公共団体の地方創生プロジェクトを応援することで、社会貢献につなげていくこと、さらに自社の魅力を社会に宣伝していくメリットのウェイトが大きい制度ではないかと思います。

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