前回は雑損控除の損失の金額の計算の原則部分まで見ていきました。実務的には計算が困難な内容であり、現在は合理的な計算方法も認められているところまでご紹介しました。今回はその続きとなりますが、まず、雑損控除の金額から見ていきます。

雑損控除の金額

次の①と②の金額のうちいずれか多いほうの金額です。

  1. 損害金額 + 災害等関連支出の金額 – 保険金等の額)-(総所得金額等)×10%
  2. (災害関連支出の金額 – 保険金等の額)-5万円

保険金等の額とは、災害などに関して受け取った保険金や損害賠償金などの金額をいいます。

災害関連支出の金額とは、次のような支出をいいます

  • 災害により滅失した住宅、家財などを取壊しまたは除去するために支出した金額など
  • 盗難や横領により損害を受けた資産の原状回復のための支出など

損害金額とは

(原則計算)

損害金額 = 損失発生直前の時価 - 損失発生直後の時価

(合理的な計算方法)

損害金額については、災害により被害を受けた住宅や家財、車両の損失額の「合理的な計算方法」で計算することができます。

また、損害を受けた資産が減価償却資産である場合には、その資産の取得価額から非業務用資産として計算した減価償却費累積額相当額を控除した金額を基礎として損害金額を計算することもできます。

合理的な計算方法の詳細

災害により被害を受けた住宅や家財、車両の損失額は、その損失の生じた時の直前におけるその資産の価額を基として計算することとされていますが、以下の要件を全て満たす場合について、次の各方法により計算して差し支えありません。

要件

  1. 住宅の主要構造部に損壊がある場合
  2. 損害を受けた資産について個々に損失額を計算することが困難な場合

住宅に対する損失額の計算

住宅の取得価額が明らかな場合

損失額(注1、2) =(住宅の取得価額 - 減価償却費) × 被害割合

(注1)保険金、共済金及び損害賠償金などで補てんされる金額がある場合には、その金額を差し引いた後の金額が損失額となります。ただし、被災者生活再建支援法に基づくものは除きます(以下同じ)

(注2)損失額には、損害を受けた住宅等の原状回復費用(修繕費)が含まれます(以下同じ)

住宅の取得価額が明らかでない場合

損失額 =〔(1m2当たりの工事費用 × 総床面積)- 減価償却費〕 × 被害割合

家財に対する損失額の計算(生活に通常必要な動産で、車両を除きます)

家財の取得価額が明らかな場合

損失額 = (家財の取得価額 - 減価償却費) × 被害割合

家財の取得価額が明らかでない場合

損失額 = 家族構成別家庭用財産評価額 × 被害割合

車輛に対する損失額の計算

損失額 = (車両の取得価額 - 減価償却費 )× 被害割合

(注)車両については、生活に通常必要な資産と認められる場合に、雑損控除の対象となります。 なお、生活に通常必要であるかどうかについては、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族が、専ら通勤に使用しているなど、車両の保有目的、使用状況等を総合勘案して判断することになります。

雑損失の繰越控除

雑損控除とは、災害又は盗難若しくは横領によって、資産について損害を受けた場合等に受けることができる所得控除です。
さらに、損失額が大きくてその年の所得金額から控除しきれない場合には、翌年以後(3年間が限度)に繰り越して、各年の所得金額から控除することができます。
なお、雑損控除は他の所得控除に先だって控除することとなっています。

あなたのミカタになる情報を発信!

関連記事

平成30年度税制改正〜給与所得控除額等・基礎控除の見直しと所...

税務

令和3年度税制改正~退職所得課税の見直し(短期退職手当等の創...

税務

確定申告が不要となる副業の収入~給与所得者の特例...

税務

個人事業主と生計を一にする親族〜所得税の同一生計親族間取引に...

税務

雑所得の計算区分(業務に係る雑所得)の追加~副業収入の範囲の...

税務

平成29年度税制改正〜個人住民税の配偶者控除・配偶者特別控除...

税務