外形標準課税とは平成16年4月1日以後の開始事業年度より法人事業税に導入された制度です。今回は外形標準課税の概要と令和6年度税制改正の内容を見ていきます。
Contents
外形標準課税とは
法人事業税には収入割等さまざまな課税標準がありますが、従来、法人事業税の所得割が適用されていた企業のうち事業年度終了の日の資本金が1億円超の企業に適用される制度です。事業に対する応益課税としての事業税の性格の明確化や税の安定確保等の観点から導入されました。
ただし、公共法人等、特別法人、人格のない社団等、みなし課税法人、投資法人、特定目的会社、一般社団法人及び一般財団法人は外形標準課税から除かれています。
課税の対象となるもの
課税標準は所得割・付加価値割・資本割があり、それぞれに税率をかけて計算し合計値が法人事業税となります。
資本金1億円超の企業が外形対象の理由
外形基準のうち、付加価値割は収益配分額(報酬給与額・純支払利子・純支払賃借料)と単年度損益の合計額となっており、従来の所得割(各事業年度の所得)以外に収益配分額を集計してゆく必要があるため、特に中小企業には事務作業に負担がかかります。
また、外形標準課税はこれまで赤字により課税されなかった企業にも課税されるようになるため、中小企業に多い赤字企業にとっては税負担が増えることになります。したがって、資本金の金額で規模を判断しているものと思われます。
外形標準課税の対象法人の見直し
令和6年度税制改正では、現行の資本金1億円超の基準に加え、「減資への対応」と「100%子法人等への対応」が追加されています。
減資への対応
現行基準(資本金1億円超)を維持した上で、前事業年度に外形標準課税の対象であった法人であって、当該事業年度に資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超えるものは、外形標準課税の対象とする。
(令和7年4月1日以後開始事業年度から適用)
※改正前に外形標準課税の「対象外」である法人については、現行基準(資本金1億円超)や「100%子法人への対応」の基準に該当しない限り、引き続き外形標準課税の「対象外」
※改正後に新設される法人についても、現行基準等に該当しないかぎり、外形標準課税の「対象外」
100%子会社法人等への対応
資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人等の100%子法人等のうち、資本金が1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超えるものは、外形標準課税の対象とする。
(令和8年4月1日以後開始事業年度から適用)
負担変動軽減措置
上記100%子法人等への対応により外形標準課税の対象となった法人に対して、次のように税負担が軽減されます。
(令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度)
⇒「令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度分の法人事業税について申告納付すべき法人事業税額」が「当該法人を外形標準課税の対象外である法人とみなした場合に申告納付すべき法人事業税額を超える」ときは、当該超える金額の3分の2に相当する金額を控除します。
(令和9年4月1日から令和10年3月31日までの間に開始する各事業年度)
⇒「令和9年4月1日から令和10年3月31日までの間に開始する各事業年度分の法人事業税について申告納付すべき法人事業税額」が「当該法人を外形標準課税の対象外である法人とみなした場合に申告納付すべき法人事業税額を超える」ときは、当該超える金額の3分の1に相当する金額を控除します。
特例措置
産業競争力強化法の改正の日(未定)から令和9年3月31日までの間に特別事業再編計画に基づいて行われるM&Aにより100%子会社となった法人等については、上記にかかわらず、5年間、外形標準課税の対象外となります。
まとめ
外形標準課税は赤字企業の場合は資本金を1億円に減資することで納税額を抑える効果がありますが、逆に黒字企業については外形標準課税を適用した方が納税額を抑えられる場合があります。必ずしも「減資=節税」とはならないため、タックスプランニング等を試みることも必要です。