前回までは、租税特別措置法の「中小企業者」の範囲の見直しと「適用除外事業者」について解説しました。
今回は「みなし大企業」「適用除外事業者」に該当する場合、租税特別措置法の各種の特別措置が適用できないもの、適用できるものについて整理します。

平成31年4月1日以後開始事業年度から各特例措置適用の可否を考慮する必要があります。

みなし大企業・適用除外事業者に共通して適用できない特例措置

以下の特例措置は「みなし大企業」「適用除外事業者」と判定された場合は適用できません。

特例措置 不適用措置の内容
(適用期限)
中小企業技術基盤強化税制(措置法第42条の4➃,➄,➅) 税額控除
(R3.3.31までに開始する各事業年度)
高省度エネルギー増進設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措置法第42条の5②) 税額控除
(R2.3.31までに取得し事業供用)
中小企業者が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措置法第42条の6➀,➁) 税額控除
(R3.3.31までに取得し事業供用)
地方活性向上設備等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措置法第42条の11の3➀,➁) 税額控除
特別償却

(R2.3.31までに計画の認定を受け、認定日の翌日以後2年を経過する日までの期間内の日を含む事業年度で取得し事業供用)
特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措置法第42条の12の3➀,➁) 税額控除
特別償却

(R3.3.31までに取得し事業供用)
中小企業者等が特定経営改善設備を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(措置法第42条の12の4➀,➁) 税額控除
特別償却

(R3.3.31までに取得し事業供用)
給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の法人税額の特別控除(措置法第42条の12の5➁) 税額控除
(R3.3.31までに開始する各事業年度)
被災代替資産等の特別償却(措置法第43条の3) 特別償却
(特定非常災害発生日の翌日以後5年を経過する日までの間に取得し事業供用)
特定事業継続力強化設備等の特別償却(措置法第44条の2) 特別償却
(R3.3.31までに取得し事業供用)
特定地域における工業用機械等の特別償却(措置法第45条➁) 特別償却
(R3.3.31までに取得し事業供用)
少額減価償却資産の取得価額の一時損金算入(措置法第67条の5) 一時損金算入
(R2.3.31までに開始する各事業年度)

上記、赤色の項目は認定を受ける必要がなく、また、特例措置を使用する頻度が高いと思われます。

特例措置を適用できない場合に、過年度の繰越欠損金がなく、所得が多額の法人は税額に多大な影響がでますので留意が必要です。

適用除外事業者に適用できない特例措置

以下の特例措置は「適用除外事業者」と判断された場合は適用できません。

特例措置 不適用措置の内容
(適用期限)
法人税率の軽減(措置法第42条の3の2)(※1) 税率軽減
(R3.3.31までに開始する各事業年度)
一括評価貸倒引当金の法定繰入率の適用(措置法第57条の9)(※1) 実績率にかえて法定繰入率を選択可能

※1 みなし大企業と判定されても特例措置の適用があります。 したがって、「適用除外事業者」のほうが特例措置の不適用範囲が広いことがわかります。

上記、法人税率の軽減は法人税法の規定(法法第66条②)と租税特別措置法の規定(措置法第42条の3の2)があるため以下に整理します。

対象 法人税法の税率 措置法特例の税率

中小法人(※2

(資本金1億円以下の法人)
年800万円以下の所得金額 19% 15%
年800万円超の所得金額 23.2%
中小法人以外
(資本金1億円超の法人)
所得区分なし 23.2%

※2 以下の中小法人には、軽減税率の特例は適用されません(法法第66条➅)

  1. 大法人(資本金5億円以上の法人等)による完全支配関係がある普通法人
  2. 完全支配関係にある複数の大法人に発行済株式の全部を保有されている普通法人
  3. 相互会社、投資法人、特定目的会社、受託法人

みなし大企業・適用除外事業者に適用できる特例措置

以下の特例措置は「みなし大企業」「適用除外事業者」と判断された場合であっても適用できます。
原則、資本金1億円以下の法人に適用されます。

特例措置 適用措置の内容
(適用期限)
特別試験研究に該当する委託試験研究先の特例(措置令第27条の4⑱七,八) その他
交際費等の課税の特例(措置法第61条の4)(※3) 定額800万円控除
(R2.3.31までに開始する各事業年度)
欠損金の繰戻還付(措置法第66条の13)(※3) その他
(R2.3.31までに終了する各事業年度)

※3 ※2と同様、大法人(資本金5億円以上の法人等)との間に完全支配関係がある法人は適用対象となりません。

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