会社や個人が事業をおこなううえで従業員を採用して給与を支払うことがあります。このときに給与から所得税を差引いて従業員に支給します。これは給与の支払者(源泉徴収の対象となる所得の支払者)が源泉徴収義務者であるからです。
源泉徴収制度とは
所得税は、所得者自身が、その年の所得金額とこれに対する税額を計算し、これらを自主的に申告して納付する、いわゆる「申告納税制度」を採用しています。これと併せて特定の所得については、その所得の支払の際に支払者が所得税を徴収して納付する源泉徴収制度が採用されています。
すなわち、源泉徴収制度とは給与や利子、配当、税理士報酬等の所得を支払う者が、その所得を支払う際に所得税額を計算し、支払金額からその所得税額を差引いて所得の支払日の翌月10日までに国に納付するというものです。
源泉徴収義務者とは
源泉徴収に係る所得税や復興特別所得税を徴収して国に納付する義務のある者を「源泉徴収義務者」といいます。
源泉徴収の対象とされている所得の支払者は、それが会社や協同組合である場合はもちろん、学校、官公庁であっても、また、個人や人格のない社団・財団であっても、全て源泉徴収義務者となります。(所法6、復興財確法8②)
ただし、個人については以下の例外規定があります。
常時2人以下のお手伝いさんなどのような家事使用人だけに給与を支払っている個人は、その支払う給与や退職金について源泉徴収をする必要はありません。(所法184、200)
この規定は、常時2人以下のお手伝いさんに給与を支払っていても源泉徴収義務者にならないものですから、たとえ1人であっても従業員に対して給与を払っている個人は源泉徴収義務者となりますから注意してください。
なお、給与所得について源泉徴収義務を有する個人以外の個人(源泉徴収義務者でない者)が支払う弁護士報酬などの報酬・料金については、源泉徴収をする必要はありません。(例えば、給与所得者が確定申告などをするために税理士に報酬を支払っても、源泉徴収をする必要はありません。)
上記(所法184、200)は個人の例外規定です。法人の場合は役員報酬や給与を支払っていなくても「源泉徴収義務者」となります。
給与の支払を開始する場合の届出書
国内において会社や個人が、新たに給与の支払を始めて、源泉徴収義務者となる場合には、「給与支払事務所等の開設届出書」を、給与支払事務所等を開設してから1か月以内に提出することになっています。
この届出書の提出先は、給与を支払う事務所、事業所その他これらに準ずるものなどの所在地を所轄する税務署長となります。
法人の設立時に従業員を採用せず役員報酬も支払う予定が無い場合があります。
しかし、法人に関しては必ず「源泉徴収義務者」となるため、設立時に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出しておくことは、後日おこりうる手続失念の防止上、有効かと思います。