建物の増築・修理や機械等を経年劣化で修理する場合に、会計処理の判断に迷うことがあります。この場合の判断過程を対話形式で纏めましたのでお気軽にお読みください。

事業所拡張の相談

A)事業所が手狭になってきたので建物を増築して、工場の機械もメンテナンスしようと思うのだけど、決算への影響額を見てもらえるかな?

B)増築されるのですね。建物の完成が楽しみです。それらの支出について見積りはございますか?

A)これが見積りを纏めたものだよ。

(見積書の概要)

  • 既存建物の拡張(増築)工事・・・1千万円
  • 既存機械のメンテナンス
    A機械(経年劣化で以前と同様の部品を交換)・・・25万円

B)まず、建物工事は見積内容の全てが建物増築部分と考えますと、全額を建物の取得として資産計上する必要があります。
税務上、建物の増築、構築物の拡張、延長等(量的支出という)は建物等の取得にあたるとされています。(法基通7-8-1(注意書き))

資本的支出とは

A)一昨年に建物の壁にパネルを貼って全面改装した時と同じように資本的支出ではないのだね。

B)はい、一昨年は既存建物の壁全面にパネルを貼ったことから、壁の強度等が増したため資本的支出(質的支出という)となりました。

資本的支出とは、その支出額のうちに、その資産の取得時に通常の管理又は修理をするものとした場合において、予測されるその資産の使用可能期間を延長又は予測されるその資産の価値を増加させる部分に対応する金額をいう。
(法令132条(抜粋))

  しかし、今回の建物の増築は既存資産の枠外への量的支出となります。因みに、取得と資本的支出は区分が必要で、特別償却や少額減価償却資産の損金算入特例・一括償却資産は適用要件が資産の取得となるため留意すべき事項です。

B)次の既存機械のメンテナンスでA機械の25万円の支出は全額を修繕費として損金算入できます。この場合の修繕費の考え方は、先程の資本的支出の考え方と表裏一体となります。
前提として、「その資産の通常の管理又は修理をするものとした場合の支出」であることです。
そのうち、「その資産の取得時に予測されるその資産の使用可能期間を延長しない」「その資産の取得時に予測されるその資産の価値を増加させない」部分の支出が修繕費となるわけです。

A)なんとなく理解できたけど直接的に言うとどうなるかな?

B)はい、修繕費の考え方の一つ目は「通常の維持・管理のための支出」ですから、資産の性能を維持・管理するためには、「反復性」と「予測性」という概念がわかりやすいです。
例えば、一昨年の建物の既存壁全面にパネル貼替は、その建物の取得時に予測される通常の維持・管理の支出ではないですし、反復性もありません。したがって、資本的支出となるわけです。
反対に、既存機械のメンテナンスでA機械の25万円の従前部品交換支出は、その機械の取得時に摩耗による部品交換が予測(予測性)され、性能を維持するがゆえに反復性もあります。
あと、修繕費の考え方の二つ目は、先程の資本的支出とは関係ありませんが、「棄損した資産の原状回復費用」です。壊れた資産を現状に復帰させるものですからこれはわかり易いですね。

A)なるほど理解できました。見積りの詳細を試算してくれませんか?その上で支出を決定します。

B)承知しました。

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