法人版事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。
企業版事業承継税制の沿革
事業承継税制は平成21年度税制改正において創設されました。しかし、適用要件が厳格で免除事由の発生までにリスクが顕在化する可能性があることから、幾度かの改正により適用要件の緩和等が行われてきましたが、その適用件数は伸び悩むこととなっていました。(以下、一般措置という)
しかしながら、中小企業の経営者の高年齢化及び後継者不足が見込まれ、このままでは中小企業の減少とそれに伴う雇用の喪失が喫緊の課題となり、平成30年度税制改正において10年間の時限措置として大幅に条件を緩和した特例措置が創設されました。(以下、特例措置という)
したがって、法人版事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」の二つの措置法上の制度があります。特例措置については、特例承認計画の策定・確認申請や適用期限が設けられており、納税猶予対象である非上場株式等の制限撤廃(総株式数の2/3から全株式)や納税猶予割合の引上げ(80%から100%)などの他、適用要件も弾力化されており使い勝手の良い制度となっています。
特例承認計画の確認申請期限の延長
法人版事業承継税制(特例措置)は、平成30年4月1日から令和5年3月31日までに都道府県知事に特例承認計画(円滑化省令第16条第1号の計画)を提出し、確認を受ける必要がありました。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により事業承継税制の特例承継計画の申請ペースは鈍化していることから、確認申請期限を令和6年3月31日まで(1年間)延長されました。
留意点は、その会社の非上場株式等について初めて特例措置の適用を受ける場合には、その非上場株式等の贈与・相続等が、平成30年1月1日から令和9年12月31日までの間の贈与・相続等であることが要件となります。
今回の改正は、この適用期限は延長されていないので注意してください。
企業版事業承継税制(特例措置)の流れ
- 特例承認計画の策定・提出・確認
- 平成30年4月1日から令和6年3月31日までに都道府県知事に特例承認計画(円滑化省令第16条第1号の計画)を提出し、確認を受けます。
- 相続・贈与の発生
- 特例措置の適用期限は平成30年1月1日から令和9年12月31日までとなります。
- 都道府県知事に円滑化法の認定を受ける
- 各税目による以下の期間内に、都道府県知事に円滑化法の認定申請書を提出します。
●相続の場合
相続開始の日の翌日から5ヵ月を経過する日(申請基準日)から相続開始の日の翌日から8ヵ月を経過する日(提出期限)まで
●贈与の場合
贈与があった年分の10月15日(贈与が10/16~12/31の場合は贈与日) (申請基準日)から翌年の1月15日(提出期限)まで
- 相続税・贈与税の申告
- 相続税・贈与税の申告期限までにこの制度の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書及び一定の書類を税務署へ提出するとともに、納税が猶予される贈与税額及び利子税の額に見合う担保を提供する必要があります。
●相続税
相続開始があったことを知った日(通常は被相続人が死亡した日)の翌日から10か月以内に、所轄の税務署(通常は、被相続人の住所地を所轄する税務署)に相続税の申告をします。
●贈与税
贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに、受贈者の住所地の所轄の税務署に贈与税の申告をします。
- 年次報告と継続届出書
- 申告期限から5年間(事業承継期間)は1年ごとに都道府県知事に年次報告書、所轄税務署長に継続届出書を期限内に提出します。
また、事業承継期間の終了後は免除事由の発生(後継者の死亡、会社の破産等)まで3年ごとに所轄税務署長に継続届出書を提出します。