毎月納付する社会保険料については、債務確定基準により損金の額に算入することが相当であるという前提に立っています。今回は、法人税法や法人税法基本通達を見ながら確認していきます。

基本通達を確認しよう

9-3-2 社会保険料の損金算入の時期

法人が納付する次に掲げる保険料等の額のうち当該法人が負担すべき部分の金額は、当該保険料等の額の計算の対象となった月の末日の属する事業年度の損金の額に算入することができる

  1. 健康保険法第155条《保険料》又は厚生年金保険法第81条《保険料》の規定により徴収される保険料
  2. 旧効力厚生年金保険法第138条《掛金》の規定により徴収される掛金(同条第5項《設立事業所の減少に係る掛金の一括徴収》又は第6項《解散時の掛金の一括徴収》の規定により徴収される掛金を除く。)又は同法第140条《徴収金》の規定により徴収される徴収金

(注)同法第138条第5項又は第6項の規定により徴収される掛金については、納付義務の確定した日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。

アンダーライン部分に「当該保険料等の額の計算の対象となった月の末日の属する事業年度の損金の額に算入することができる」とあるのは、上記2.で除外されている一括徴収を除き(一括徴収は注意書き参照)、各月の末日に社会保険料に係る債務が確定することにより損金算入できることを記載しています。

債務確定基準とは

「債務が確定する」とは、法人税法において、損金の額は別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとしています。

法人税法である、法第22条第3項第2号には、「前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額」とあります。

この法人税法を受けて以下の基本通達で「債務が確定しているもの」を具体的に列挙しています。

2-2-12 債務確定の判定

法第22条第3項第2号《損金の額に算入される販売費等》の償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、別に定めるものを除き、次に掲げる要件の全てに該当するものとする。

  1. 当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。
  2. 当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
  3. 当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。

損金算入の時期の留意点

社会保険料は毎月末日に在籍している被保険者を基礎として保険料を計算しています。したがって、各月末日前に退職した者がいる場合は該当月の保険料計算の対象外となります。

例えば、3月31日が決算日の法人は3月分(原則、納付は翌月末日)の社会保険料法人負担分を未払金として計上することにより損金に算入することができます。

しかし、3月20日が決算日の法人は3月31日が翌期となり3月20日の事業年度終了日に3月分の社会保険料に係る債務が未確定です。ゆえに、これを未払金計上のうえ損金算入することは認められません。

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