経営セーフティ共済制度は、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐためのものですが、今回は共済掛金・共済金の会計処理と税務申告時の留意点をみていきます。

経営セーフティ共済制度の概要

取引先倒産時の借入

取引先が倒産した場合に共済金の借入れが可能であり、無担保・無保証人で受けられます。

共済金借入額の上限は「回収困難となった売掛金債権等の額」か「納付された掛金総額の10倍(最高8,000万円)」の、いずれか少ないほうの金額となります。

※倒産日から6か月を経過した場合には共済金の借入手続きを行うことはできませんので注意が必要です。

共済掛金の効果

共済掛金月額は5千円~20万円まで自由に選べ、増額・減額できます。

また確定申告の際、掛金を損金(法人の場合)、または必要経費(個人事業主の場合=事業所得に限る)に算入できるので、節税効果があります。簡単にいうと掛金を損金等にできる「積立定期」のようなものです。

共済契約解約に伴う返金

共済契約を解約された場合は、解約手当金を受け取れます。

自己都合の解約であっても、掛金を12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、40か月以上納めていれば、掛金全額が戻ります(12か月未満は掛け捨てとなります)。

共済掛金・共済金の会計処理

法人の場合、会計上の資産の概念は「資産とは、一定時点における企業資本の具体的運用形態であり、将来の収益獲得に役立つ経済的価値を有するものをいう」とあります。
このことから、解約時に返金される共済掛金については、資産的価値が存在します。支払時に「保険積立金」等の資産科目(投資その他の資産区分)で処理しましょう。

「保険料」等の費用科目で処理する事例も見かけますが、会計上費用処理しないと税務上損金にならない訳ではありません。(税務上の理由は後述します)

会計要請に準拠して資産計上した方が外部にも資産価値がわかり易く表示され、利益を含め財務諸表が良く見えます。
税効果会計を導入している場合は、掛金支払時に将来加算一時差異となりますので、法人税等調整額と繰延税金負債が計上されます。

個人の場合は、企業会計の要請がありませんから必要経費で処理してもかまいません。

共済契約を解約した場合は、解約以前に支払った掛金残高(40ヵ月以上の納付の場合は全額)が返金されます。会計処理は「保険積立金」を取崩しましょう。

共済掛金・共済金の税務処理

法人の場合は、別表十(七)のⅢに「特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書」欄があり、記載が求められています。

個人事業主の場合は、令和3年度分から「特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書」の記載が求められています。

上記明細書が確定申告書に添付されていない場合には損金算入・必要経費算入が認められません。個人・法人ともに確定申告書に添付されていない事例が散見されているようなので留意が必要です。

法人で共済掛金を資産計上した場合は、損益計算書の利益に影響がありませんから、別表十(七)を記載したうえ別表四で所得を減少させるように減算してください。
共済契約を解約した場合は、「保険積立金」を取崩すこととなりますので、逆に所得を増やすように加算しましょう。
税効果会計に伴う法人税等調整額は所得に影響させないようにしてください。

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