有形固定資産の取得価額は、会計上と税務上の規定を踏まえ貸借対照表に計上すべき金額を決定することになります。しかし、対象物件によっては判断に迷う場合があります。
購入した減価償却資産の取得価額の範囲
有形固定資産の取得価額は購入代価と付随費用にわけられます。
- 購入代価とは対象物の対価そのものです。
- 付随費用とは対象物を取得・供与する際に付随して支出した費用で運賃や試運転・据付費用などです。
例)パソコンを購入した場合の取得価額
会計上
有形固定資産の取得価額は、購入代価等に、買入手数料、運送費、引取運賃、据付費、試運転費等の付随費用を加えた金額とします。ただし、付随費用が少額である場合(注1)は取得価額に算入しないことができます。
(注1)付随費用が少額である場合について会計上では具体的な列挙規定はありません。
税務上
購入した減価償却資産の取得価額には、原則として、その資産の購入代価とその資産を事業の用に供するために直接要した費用が含まれます。また、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税などその資産の購入のために要した費用も含まれます。
ただし、次に掲げるような費用については、減価償却資産の取得に関連して支出した費用であっても、取得価額に算入しないことができます(注2)。
(注2)取得価額に算入しても可ということです
- 次のような租税公課等
- 不動産取得税又は自動車取得税
- 新増設に係る事業所税
- 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用
- 建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用
- いったん結んだ減価償却資産の取得に関する契約を解除して、他の減価償却資産を取得することにした場合に支出する違約金
- 減価償却資産を取得するための借入金の利子(使用を開始するまでの期間に係る部分)
(使用を開始した後の期間に係る借入金の利子は、期間の経過に応じて損金の額に算入します) - 割賦販売契約などによって購入した減価償却資産の取得価額のうち、契約において購入代価と割賦期間分の利息や売手側の代金回収のための費用等が明らかに区分されている場合のその利息や費用
会計上と税務上の取得価額の論点
付随費用に関して、実務では税務上の列挙規定を参照し会計上と税務上の取得価額を一致させて処理する機会が多いです。
パンドラの箱ではないですが、会計上と税務上で取得価額の乖離が生じた場合、減価償却費に影響が生じて申告調整が必要となり、固定資産台帳の二重管理で管理コストが増大するからです。
次回は、有形固定資産の取得価額で論点が多い車輌の取得価額について具体例を挙げていきます。
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