消費税額の計算には売上税額と仕入れ税額について、計算方法に原則と特例があります。インボイス制度が令和5年10月1日より開始されることを含めて確認していきます。
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売上税額の計算
原則:割戻し計算
売上の税込金額(税率ごとに区分)の合計額から税抜金額に割戻して課税標準額を計算し、売上税額を求める方法です。
税率ごとに区分した課税期間中の課税資産の譲渡等の税込価額の合計額(売上の税込金額)に、108分の100(軽減8%税率の場合)又は110分の100(10%税率の場合)を掛けて税率ごとの課税標準額(税抜金額から千円未満を切り捨てた金額)を算出し、それぞれの税率(6.24%(軽減8%税率の場合)又は7.8%(10%税率の場合))を掛けて売上税額を算出します(新消法45)。
特例:積上げ計算
適格請求書又は適格簡易請求書(以下これらを併せて「適格請求書等」といいます。)に記載した消費税及び地方消費税(以下消費税等という)の合計額(積上げ)から売上税額を計算することができる方法です。
相手方に交付した適格請求書等の写しを保存している場合(適格請求書等に係る電磁的記録を保存している場合を含みます。)には、これらの書類に記載した消費税額等の合計額に100分の78を掛けて算出した金額を売上税額とすることができます(新消法45⑤、新消令62①)。
積上げ計算では、消費税等の合計額(積上げ)より国税部分を算出する計算上、消費税等の合計額に100分の78を掛ける算出方法一択(旧税率の経過措置がない場合)となります。
なお、売上税額を積上げ計算した場合、仕入税額も積上げ計算しなければなりません。
仕入税額の計算
原則:積上げ計算
相手方から交付を受けた適格請求書などの請求書等(提供を受けた電磁的記録を含みます。)に記載されている消費税額等のうち課税仕入れに係る部分の金額の合計額(積上げ)に100分の78を掛けて仕入税額を算出します(新消法30①、新消令46①②)。
特例:割戻し計算
税率ごとに区分した課税期間中の課税仕入れに係る支払対価の額(税込)の合計額に、108分の6.24(軽減8%税率の場合)又は110分の7.8(10%税率の場合)を掛けて算出した金額を仕入税額とすることができます(新消令46③)。
なお、割戻し計算により仕入税額を計算できるのは、売上税額を割戻し計算している場合に限られます。
計算方法選択の留意点
売上税額の計算に「割戻し計算」を選択した場合、仕入税額の計算は「積上げ計算」又は「割戻し計算」のいずれかの方法を選択できます。
売上税額 | 仕入税額 |
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割戻し計算(原則) | 積上げ計算(原則) |
割戻し計算(特例) | |
積上げ計算(特例) | 積上げ計算(原則) |
売上税額の計算は、取引先ごとに割戻し計算と積上げ計算を分けて適用するなど、併用することも認められますが、併用した場合であっても売上税額の計算につき積上げ計算を適用した場合に当たるため、仕入税額の計算方法に割戻し計算を適用することはできません(インボイス通達3-13)。
なお、仕入税額の計算方法において、「積上げ計算」と「割戻し計算」を併用することはできません。